あいち相続ひろばの野々山です。
資産を次世代に承継する際に「商事信託」と「民事信託」という言葉を耳にする方は多いでしょう。どちらの信託を選ぶべきか迷っている方も少なくありません。「会社株式や不動産をどのように管理・承継すべきか」「家族信託で対応できるのか、法人信託が適しているのか」などの疑問は非常に重要です。
この記事では、商事信託と民事信託の違いをわかりやすく解説し、活用事例や税務・リスク面の注意点も整理します。この記事を読むと、どちらの信託を選ぶべきか、専門家に相談すべきポイントまで理解できます。
特に、会社経営者・中小企業オーナー・資産運用者・不動産オーナーで、資産承継や事業承継を検討している方には必読の内容です。家族の公平性や資産保全を重視する方は、ぜひ最後までご覧ください。
資産承継や事業承継を考える際、信託は大きな選択肢のひとつです。信託とは、財産の所有者(委託者)が特定の財産を信頼できる受託者に預け、一定のルールに従って受益者に利益を分配する仕組みです。信託には大きく分けて「商事信託」と「民事信託」があり、それぞれ特徴や用途が異なります。
商事信託は、主に銀行や信託会社などの法人が受託者となり、商業的な運営を目的として行われる信託です。商事信託は法律上「信託業法」に基づき、金融商品としての側面が強く、資産運用や不動産管理、企業の事業承継などの幅広い活用が可能です。
たとえば、賃貸不動産を多数所有するオーナーが、管理会社に信託設定を行い、賃料収入を信託契約に基づき分配することができます。この場合、受益者は家族や法人、場合によっては投資家としての法人も設定可能です。また、商事信託は法人が受託者となるため、信託財産は分別管理され、破綻リスクが低い点もメリットです。
一方、民事信託は個人間で契約できる信託であり、「家族信託」と呼ばれることもあります。民事信託は信託業法ではなく民法の規定に従い、個人の資産管理や承継を目的に設計されます。主に、認知症対策や高齢者の財産管理、子どもへの承継など家庭内の資産承継に適しています。
具体例として、会社経営者が自分の持つ不動産や株式を妻を受託者、子どもを受益者として信託設定するケースがあります。これにより、自分が認知症になった場合でも、妻が財産を管理し、子どもに利益を分配できる仕組みを作ることが可能です。また、民事信託は柔軟性が高く、受益者や分配条件を自由に設定できる点が特徴です。
ここで両者を比較すると、次のような特徴があります。
受託者の違い:商事信託は法人、民事信託は個人または法人でも可
目的の違い:商事信託は資産運用・管理・事業承継向け、民事信託は家族承継・高齢者支援向け
法的規制:商事信託は信託業法、民事信託は民法に基づく
柔軟性:民事信託の方が契約内容や分配ルールの自由度が高い
リスク管理:商事信託は信託会社の管理下で安全性が高い
このように、どちらを選ぶかは、資産の種類、承継の目的、リスク許容度、家族の構成などによって大きく変わります。会社経営者や不動産オーナーの場合、事業承継や賃貸物件管理などで法人受託が望ましい場合は商事信託が向き、家庭内資産の管理や家族承継が中心であれば民事信託が適しています。
前編では、信託の基本概念と商事信託・民事信託の違いを整理しました。資産承継における信託の役割は、単に財産を渡すだけでなく、リスク管理や柔軟な分配設計にあります。次の中編では、具体的な活用事例や契約設計のポイント、税務上の注意点をさらに掘り下げます。
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