あいち相続ひろばの野々山です。
身近な方が亡くなったとき、多くの方が直面するのが煩雑な相続手続です。戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更など、やるべきことが多岐にわたるため、「どの専門家に依頼すればよいのか分からない」というお声をよく耳にします。特に行政書士については、「相続で何をしてくれるのか?」「司法書士や弁護士とはどう違うのか?」と疑問に思われる方が少なくありません。
本記事では、行政書士が相続で対応できる業務・できない業務を整理し、他士業との違いや連携の仕組みをわかりやすく解説します。さらに、依頼するメリット・デメリット、費用の目安、実際のサポート事例もご紹介します。
相続手続をスムーズに進めたい方、専門家選びで迷っている方はぜひ最後までお読みください。
行政書士は相続手続において頼れる存在ですが、すべての業務を担えるわけではありません。相続に関わる法律専門職は複数存在し、それぞれに業務範囲が厳格に分かれています。ここでは、行政書士が「できないこと」と、司法書士・税理士・弁護士といった他士業との違いを整理します。
行政書士は書類作成を専門とする資格であり、代理権や登記権限がないため、次のような業務は扱えません。
不動産の相続登記
不動産の名義変更は司法書士の独占業務です。行政書士が作成した遺産分割協議書を使い、最終的な登記申請を司法書士に依頼する必要があります。
裁判や調停での代理
相続人同士で争いが起きた場合、家庭裁判所で調停や審判を行うことになります。この代理人になれるのは弁護士のみで、行政書士は関与できません。
相続税申告や税務相談
相続財産の総額が基礎控除を超える場合には、相続税申告が必要です。税金計算や申告書の作成は税理士の独占業務であり、行政書士は関われません。
司法書士は、登記や裁判所提出書類の専門家です。特に相続登記に関しては、2024年4月から義務化されたことにより、司法書士の役割がさらに重要になっています。
行政書士:戸籍収集、相続関係説明図、遺産分割協議書作成が得意
司法書士:不動産の名義変更(相続登記)、家庭裁判所への提出書類作成が可能
行政書士が作成した協議書をもとに、司法書士が登記を行うという流れで、両者は補完関係にあるといえるでしょう。
税理士は税務の専門家であり、相続税や贈与税の申告・節税アドバイスを行えます。遺産総額が多い場合や、事業承継を含む複雑な相続では税理士の関与が不可欠です。
行政書士:税務相談は不可。必要に応じて税理士を紹介
税理士:相続税申告、財産評価、節税シミュレーションが可能
例えば、自宅不動産や株式、生命保険などを含む遺産総額が5000万円を超えると、課税対象となるケースがあります。こうした場合には税理士との連携が必須です。
弁護士は法律トラブルの代理ができる唯一の資格者です。相続においては、相続人同士の争いが激しい場合や、遺留分侵害額請求(相続人が最低限受け取れる権利を主張する請求)が争点になる場合に活躍します。
行政書士:相続人間で合意ができている前提での書類作成が中心
弁護士:トラブル解決、交渉代理、訴訟代理が可能
例えば、「兄が不動産をすべて相続すると主張して譲らない」といった状況では、行政書士では対応できず、弁護士に依頼する必要があります。
相続手続は一人の専門家だけで完結することが少なく、複数の士業が連携して対応するのが一般的です。行政書士が窓口となり、必要に応じて司法書士・税理士・弁護士にバトンをつなぐことで、依頼者はスムーズに手続きを進められます。
実際に多くの行政書士事務所では、他士業とのネットワークを持ち、依頼者の状況に合わせた最適なサポート体制を整えています。
行政書士は「相続手続の入り口」に強みがあります。戸籍収集や協議書作成といった基本的な作業を確実に行い、相続の全体像を整理できる点が大きなメリットです。
一方で、登記・税務・紛争解決といった高度な専門分野には対応できないため、依頼する側も「行政書士に任せられる範囲」を理解しておく必要があります。
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