あいち相続ひろばの野々山です。
最近、「相続税の納税資金をどう準備するか」というご相談が増えています。
特に名古屋市内で不動産を複数所有している方の多くが、**「資産はあるけれど、現金が足りない」**という共通の悩みを抱えています。
相続税は原則として「現金一括納付」が求められるため、不動産が多い家庭では「納税資金の確保」が大きな課題になります。
そんなとき有効なのが、保険を活用した相続税対策です。保険を上手に使えば、相続発生時にスムーズに現金を確保し、納税や遺産分割を円滑に進めることができます。
この記事では、
相続税の納税資金を保険で準備する方法
不動産を多く持つ家庭での現金確保の実務
保険・贈与・信託を組み合わせた相続対策の具体例
を詳しく解説します。
「節税」だけでなく「実際に支払える仕組み」を整えたい方に、現場の実務経験をもとにわかりやすくお伝えします。
相続税の相談を受ける中で最も多いのが、**「資産はあるのに現金が足りない」**というケースです。
たとえば、名古屋市昭和区の山本さん(68歳)のように、自宅や賃貸不動産を所有している方は、帳簿上の資産額は高くても、実際に手元にある現金は限られています。
相続税は、相続発生から10か月以内に現金で納付しなければならないという厳しいルールがあります。
そのため、相続人は「不動産を売却して納税資金を作る」か、「借入れをして支払う」か、いずれかの方法を迫られることが多いのです。
しかし、現実には、
相続人間での遺産分割がまとまらない
不動産の売却がすぐに決まらない
不況で希望価格で売れない
といった事情により、期限内に現金を用意できないケースが少なくありません。
国税庁は、相続税の納付が難しい場合に「延納(分割払い)」や「物納(不動産で納税)」を認めています。
しかし、これらは“最終手段”であり、次のような条件が厳しく設けられています。
延納の場合:担保の提供や利子税の負担が必要(5年~20年の分割払い)
物納の場合:国が受け入れる資産条件(境界確定済み・共有でない・評価が安定している等)が必要
つまり、現実的には「保険などで現金を準備しておく」ことが最も確実な納税対策といえます。
相続税の支払いが滞ると、単なる税金問題にとどまらず、家族間の対立を生むこともあります。
たとえば、
「長男が自宅を相続するなら、長女が税金を多く払うのは不公平」
「不動産を売るのか、残すのか」で意見が割れる
「誰が借入れの保証人になるのか」で揉める
こうした争いは、“現金がないこと”が原因で発生する典型例です。
遺産が不動産中心の場合、「分けられない資産=分けにくい感情」へとつながり、結果的に相続が長期化することもあります。
名古屋市やその近郊(昭和区、瑞穂区、千種区、日進市など)では、
祖父母や両親から受け継いだ土地・賃貸物件を所有する「地主型相続」が多く見られます。
こうした方々は、
路線価が高く、相続税評価額が大きくなる
物件が複数あり、管理・分割が複雑
現金収入(賃料)はあるが、納税額に比べると小さい
という特徴があります。
このような場合、「節税」よりも「納税資金をどう準備するか」こそが最重要テーマになります。
相続税の納税資金対策として注目されているのが、生命保険の活用です。
保険金は、被相続人(亡くなった方)の死亡によって即座に現金化されるため、相続人が手続きに困ることなく納税資金を確保できます。
特に、「一時払い終身保険」や「相続対策保険」は、
契約者が被相続人
受取人が相続人
という設計にすることで、相続発生と同時に現金が入る仕組みを作ることができます。
さらに、死亡保険金には**「非課税枠(500万円×法定相続人の数)」**があり、節税効果も得られるため、
単なる納税準備ではなく、実務的な節税対策としても非常に有効です。
相続税対策は「相続が発生する前」に始めることが何より重要です。
特に保険を活用する場合、健康状態や年齢によって加入条件や保険料が大きく変わります。
「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにしてしまうと、
加入時期を逃してしまうことも珍しくありません。
つまり、相続税対策=生前の資金設計であり、
「節税」「納税」「分割」を一体的に考えることが、家族の未来を守る第一歩なのです。
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