あいち相続ひろばの野々山です。
自宅や賃貸不動産を子どもに引き継ぐ際、相続トラブルや税負担が心配で「信託」という仕組みを検討される方が増えています。商事信託と民事信託は、どちらも財産を管理・承継する手段ですが、仕組みや活用方法が異なり、選び方を間違えると想定通りに財産を引き継げないこともあります。
この記事では、商事信託と民事信託の違いや、不動産相続での具体的な活用方法を名古屋市の事例を交えて解説します。信託を活用すると、相続時のトラブル回避や財産管理の安全性を高めることができます。
この記事を読むことで、商事信託・民事信託の特徴や選び方、手続きの流れを理解し、名古屋市・愛知県内で安心して信託活用ができる情報を得られます。自宅や賃貸不動産を安全に子どもたちに引き継ぎたい方、高齢期の生活資金や管理を整理したい方におすすめです。
民事信託(家族信託)は、高齢者の財産管理や不動産承継を円滑にする手段として注目されています。名古屋市や愛知県内でも活用が増えており、正しい手順を踏むことで相続トラブルを未然に防げます。主な手続きの流れは以下の通りです。
信託財産の特定
自宅や賃貸物件、預貯金など、信託の対象となる財産を明確にします。例えば、名古屋市中区の事例では、築35年の自宅と名古屋市内の賃貸アパート1棟を信託財産としました。
受託者と受益者の設定
受託者:財産の管理・運用を行う人物(通常は子どもや信頼できる第三者)
受益者:財産の利益を受け取る人(多くの場合、委託者本人や家族)
受託者に適切な人を選ぶことが、信託成功の鍵です。
信託契約書の作成
契約書は法的効力を持たせるため、公正証書化するのが一般的です。内容には、財産の範囲、管理方法、収益分配方法、信託終了時の財産承継先などを明確に記載します。
登記手続き
不動産を信託財産とする場合、名古屋市法務局での登記が必要です。登記することで、信託設定が第三者に対しても効力を持ちます。
運用・管理
受託者は契約書に従い、財産の管理・運用を行います。賃貸物件の場合は、家賃収入の管理や修繕対応も受託者の役割です。
民事信託契約は柔軟ですが、設定を誤ると相続税評価や承継権利に影響します。以下の点に注意しましょう。
信託目的を明確にする
「親の生活保障のため」「賃貸収益を子どもに分配する」など、具体的に記載します。
受託者の権限範囲を限定
無制限に権限を与えると、トラブルの原因になります。
終了時の処理を規定
信託終了後の財産承継先を明確にすることで、相続発生後の揉め事を防げます。
税務面の確認
信託設定による相続税や贈与税の影響を、税理士と相談して正しく評価します。
名古屋市昭和区の事例では、68歳の女性が自宅と名古屋市内の賃貸物件を民事信託に設定。受託者に長男、受益者に本人を指定しました。契約書は公正証書化し、登記も完了。結果として、親の死亡後も長男が管理権限を持ちながら、母は自宅に住み続けることができました。また、信託設定により相続税対策も図られ、家族間のトラブルを未然に防げました。
民事信託は契約書作成と登記が重要
受託者・受益者・信託財産を明確に設定する
税務面も含め、専門家のサポートが不可欠
名古屋市内の実務例でも生活保障と承継の両立が可能
次のステップでは、後編として商事信託の活用方法と、民事信託との組み合わせによる資産承継戦略について解説します。
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