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コラム
2026.2.8

相続人が認知症になると、相続手続きはここで止まります

相続人が認知症になると、相続手続きはここで止まります

「兄が認知症なんですが、このまま相続手続きはできますか?」
相続のご相談の中で、実はとても多い質問です。

結論からお伝えすると、相続人の中に認知症の方がいる場合、多くの相続手続きはその時点で止まってしまいます。

ご家族としては
「長男だから代表して進めたい」
「本人のためになる判断をするだけ」
そう思われるかもしれません。

しかし、相続は“気持ち”ではなく“法律”の世界です。
家族であっても、認知症の方の代わりに判断したり、署名したりすることは原則できません。

この記事では、

  • なぜ認知症になると相続が止まるのか

  • 実際にどんな手続きを求められるのか

  • 事前にできたはずの対策とは何か

を、司法書士の実務経験をもとに、わかりやすくお伝えします。


なぜ、相続人が認知症だと遺産分割ができないのか

相続が発生すると、原則として「遺産分割協議」を行います。
これは、相続人全員で話し合い、
「誰が・何を・どれだけ相続するか」を決める手続きです。

ここで重要なのが、遺産分割協議は“法律行為”であるという点です。

法律行為には、

  • 内容を理解する能力

  • 自分の意思で判断する能力

が必要とされます。

認知症と診断されている場合、
「内容を正しく理解できているか」
「本当に本人の意思なのか」
が客観的に確認できません。

そのため、
👉 認知症の方は、遺産分割協議に参加することができない
という扱いになります。


家族が代わりに署名することはできません

「家族が代わりにサインすればいいのでは?」
「本人のためになる内容だから問題ないのでは?」

こうしたお気持ちは、非常によくわかります。
しかし、法律上はたとえ家族であっても代筆・代理はできません。

もし、認知症の相続人がいる状態で遺産分割協議書を作成し、
そのまま不動産の名義変更や銀行手続きを行った場合、
後から無効になるリスクがあります。

最悪の場合、

  • すでに終わったはずの相続がやり直しになる

  • 不動産の名義を戻す必要が出てくる

  • 家族間の信頼関係が壊れる

といった事態にもなりかねません。


成年後見制度を使えば相続できる?

相続人が認知症の場合、よく出てくるのが成年後見制度です。

成年後見制度とは、
家庭裁判所が選任した後見人が、
認知症の方に代わって法律行為を行う制度です。

この制度を利用すれば、
👉 後見人が遺産分割協議に参加することが可能になります。

ただし、ここには大きな注意点があります。

成年後見制度の現実

  • 申立てに時間と手間がかかる

  • 原則として後見人は一生つく

  • 家族ではなく、専門職が選ばれることも多い

  • 相続後も財産管理が続く

「相続のためだけに使う」つもりが、
その後の生活にも大きく影響する制度なのです。

実際に
「こんなはずじゃなかった」
「もっと早く知っていれば…」
という声を、私たちは何度も聞いてきました。


実際にあった“相続が止まった”ケース

あるご家庭では、
お父様が亡くなり、相続人は母と兄弟2人。

そのうち、長男がすでに認知症を患っていました。

  • 不動産は実家のみ

  • 母が住み続ける予定

  • 他の相続人も争うつもりはない

一見、スムーズに進みそうな相続でした。

しかし、
長男が遺産分割協議に参加できないため、
不動産の名義変更ができず、
結局、成年後見の申立てを行うことに。

相続が終わるまでに、
1年以上の時間と大きな精神的負担がかかってしまいました。


こうなる前にできた、たった一つの対策

もし、お父様が生前に遺言書を作成していたら
この相続はまったく違う形になっていました。

遺言があれば、

  • 原則として遺産分割協議は不要

  • 認知症の相続人がいても手続き可能

  • 家庭裁判所の関与を減らせる

つまり、
👉 相続人が認知症になる前に遺言を残すこと
これが、最も現実的で確実な対策です。


「まだ大丈夫」が、一番危ないタイミング

相続のご相談で、よく聞く言葉があります。

「まだ元気だから大丈夫」
「もう少し様子を見てから」

ですが、認知症は
「ある日突然、診断がつく」ことも珍しくありません。

判断能力があるうちにしか、
遺言は作れません。

だからこそ、
“元気な今”が、実は一番の準備期間なのです。


まとめ|相続は、元気なうちの準備で決まります

  • 相続人に認知症の方がいると、相続は止まる

  • 家族でも代わりに判断することはできない

  • 成年後見制度には大きな負担がある

  • 遺言があれば防げた相続は多い

相続は、亡くなった後の問題ではありません。
生きている今の準備で、家族の未来が変わります。

「うちは大丈夫かな?」
そう思ったタイミングが、相談のベストタイミングです。

状況を整理するだけでも構いません。
お気軽にご相談ください。

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