あいち相続ひろばの野々山です。
「相続登記の義務化が始まったけれど、遺産分割協議書をどう作ればいいのか分からない」「名古屋や愛知県の実家を相続したまま数年放置していて不安」という声を、最近とても多く聞きます。相続人が複数いるケースでは、話し合いがまとまらないまま時間だけが過ぎ、気付けば“手続き途中の不動産”が放置されている状況も珍しくありません。
この記事では、**相続手続の中でも特に重要となる「遺産分割協議書の作成」**について、義務化との関係、不動産売却への影響、書類の作り方のポイントまでわかりやすく解説します。名古屋市や愛知県で相続を迎えた方が、実家・空き家・田畑など複数不動産を抱えていても、迷わず進められるよう具体的な例も交えてお伝えします。
特に、親が亡くなってから数年が経ち「そろそろ手続きを進めたい」と考えている方、兄弟姉妹との話し合いが進まず不安を抱えている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
2024年4月から相続登記が義務化され、親が亡くなって取得した不動産については「相続した日から3年以内」に名義変更を行う必要があります。この義務に違反すると、**最大10万円の過料(罰則)**が科される可能性があるため、テレビや市役所の案内を見て慌てて情報収集をする方が名古屋市や愛知県内でも急増しています。
しかし、相続登記を行う前に避けて通れないのが 「誰がどの財産を相続するか」について相続人全員で話し合い、その内容を書面にまとめる作業です。その話し合いの結果をまとめた書類が「遺産分割協議書」です。これは不動産の相続手続を進めるうえで必須の書類であり、法務局での名義変更だけでなく、銀行口座の解約・払戻し、自動車の名義変更など、幅広い手続きに利用されます。
相続人が1人しかいない場合は遺産分割協議書は原則不要ですが、実際には兄弟姉妹が3人、4人といるケースが多く、名古屋市・尾張地域・西三河など愛知県内では「相続人が多い家庭」が一般的です。兄弟の一人が遠方に住んでいたり、疎遠になっていたりする場合、相続の話し合いが後回しになりがちで、結果として不動産だけが宙に浮いた状態になります。
例えば以下のような状況です。
親が亡くなって5年以上、登記名義は「父のまま」
実家は空き家だが、誰が固定資産税を払うか決まっていない
農地や山林など、使い道が曖昧な不動産が複数ある
一度話し合いを試みたが、きょうだい間の意見不一致で中断
遺言書が残されていなかったため、基準がわからない
こうした場合、遺産分割協議書を作成し、全員の実印と印鑑証明書を揃えなければ相続登記は進みません。
特に注意が必要なのが、不動産を売却しようとした際に遺産分割協議書の有無が大きく影響する点です。
不動産仲介会社の査定を受けたとしても、登記名義が亡くなった親のままの場合、売却手続きを進めることができません。買主側も「相続登記がされていない不動産はリスクが高い」と判断するため、契約が成立しないケースがほとんどです。
さらに、遺産分割協議書に不備があると、以下のような事態が起こり得ます。
不動産の表示が登記簿と一致していないため、法務局が受理しない
相続人の記載漏れがあり、遺産分割そのものが無効になる
実家だけでなく田畑や山林の記載を忘れ、後から再協議が必要になる
名古屋市周辺や愛知県では、土地の区画が細かく複雑だったり、固定資産税の課税明細で初めて存在に気付く土地があったりするため、専門家としても慎重な財産調査が欠かせません。
遺産分割協議書を作る前に必要なのは、「相続人を確定すること」です。
相続人が誰であるかは、戸籍集め(出生から死亡までの連続した戸籍謄本)を行って初めて正確に判明します。
よくある誤解として「家族関係は把握しているから大丈夫」というものがありますが、実際には以下のようなケースも珍しくありません。
親が若い頃に離婚しており、前妻(夫)との子どもがいる
認知した子どもが戸籍上に存在している
法定相続人が兄弟姉妹だけの場合、代襲相続人(亡兄弟の子)が複数いる
疎遠な相続人の住所が分からず、連絡が取れない
こうした状況では、戸籍の読み解きや相続関係説明図の作成が必要であり、相続手続の中でも特に時間がかかりやすいポイントです。
遺産分割協議書は単なる“話し合いのメモ”ではなく、法務局が名義変更を認めるための公的書類です。したがって、以下のような形式的な要件を満たす必要があります。
相続人全員が参加していること(1人でも欠けると無効)
不動産の表示は登記簿の記載どおりに写すこと
財産ごとに“誰が取得するか”を明確に記載すること
全員が実印を押し、印鑑証明書を添付すること
協議の年月日が明確であること
特に、登記簿情報の写し間違い、住所・氏名の誤記、相続人の記載漏れは非常に多く、法務局の補正(やり直し)につながります。
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今日は空き家についてです。