あいち相続ひろばの野々山です。
「信託を使って会社や不動産を承継したいが、受益者を誰にすべきか迷っている」「複数の受益者を設定できるのか、法人を受益者にできるのか知りたい」「受益者が死亡した場合にどんなリスクがあるのか不安だ」という方は多いのではないでしょうか。
実際に、60代の不動産オーナーや中小企業の経営者からは「長男に事業を承継したいが、長女にも不公平感を与えたくない」「妻の生活も守りたいが、税金や相続トラブルを避けたい」というご相談を多くいただきます。信託や受益者の設定を誤ると、節税効果が薄れたり、かえって親族間のトラブルを招いたりする可能性があります。
この記事では、受益者の基本知識から、複数設定の可否、法人を受益者にする場合の注意点、そして受益者が死亡した場合の対応方法まで、徹底的に解説します。さらに、不動産オーナーや事業承継を考える経営者が直面しやすい事例や失敗しやすいポイントについても具体的に紹介します。
この記事を読むことで、受益者の仕組みを正しく理解し、ご自身の資産や事業を円滑に次世代へ引き継ぐためのヒントが得られます。
特に、**「会社株式や不動産を信託したいが、受益者の設定に迷っている方」や「節税と事業承継を両立させたい方」**には、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
受益者を複数に設定するケースは、家族間の公平性を確保したり、事業承継の柔軟性を高める目的で利用されます。具体的なメリットは以下の通りです。
家族間の公平性を保てる
会社株式や不動産を長男だけに集中させず、長女や配偶者も受益者に加えることで「特定の家族だけが利益を得る」状況を避けられます。これにより、相続後のトラブルを未然に防ぐ効果があります。
利益の分配を柔軟に設計可能
信託契約で受益者ごとの利益割合を設定できるため、兄妹間の不公平感を調整可能です。たとえば、会社株式の配当は長男、賃貸不動産の収益は長女といった形で分けることもできます。
将来の状況変化に対応しやすい
受益者を複数にしておくと、誰かが死亡した場合や生活状況が変わった場合に、契約内容を柔軟に変更することができます。
一方で、複数受益者を設定する際には以下のリスクがあります。
利益配分で争いが発生する可能性
分配比率や運用方針が曖昧だと、受益者間で争いが起きやすくなります。
信託管理の複雑化
受託者の管理負担が増え、契約書や会計処理が煩雑になります。
税務面での注意
受益者が複数いる場合、相続税や贈与税の課税対象が変わるため、専門家による計算が必要です。
これらのリスクを避けるため、契約書に明確な利益分配ルールを記載し、受託者が適切に運用する仕組みを作ることが重要です。
資産管理会社など法人を受益者に設定する方法もあります。法人受益者には以下のメリットがあります。
節税効果が期待できる
個人の相続税を抑えつつ、法人で利益を受け取ることで法人税率で課税され、資産の効率的運用が可能です。
資産管理が一元化できる
不動産や会社株式を法人名義で受益権として管理すれば、資産の運用や分配が体系的になり、将来的な承継もスムーズになります。
承継リスクの分散
個人受益者の死亡や生活状況の変化に左右されず、法人を通じて安定的に資産を管理できます。
しかし法人を受益者にする場合には以下の点に注意が必要です。
法人運営のコストと手間
法人設立費用や会計・税務処理の負担が発生します。
利益配分の柔軟性が低下する場合がある
法人を通じた分配は、株主総会や内部規定に従う必要があり、家族間での調整が個人受益者よりも複雑になることがあります。
税務リスクの専門判断が必要
法人税・所得税・相続税が絡むため、税務上の扱いを誤ると節税効果が薄れる可能性があります。
実務では、配偶者を第一受益者、子どもを第二受益者に設定しつつ、法人を受益者の一部として組み込む設計も可能です。
配偶者の生活保障 → 賃貸収益を配偶者へ分配
事業承継 → 自社株の受益権を長男に設定
法人活用 → 資産管理会社を通じて長女の受益権を調整
このように複合的に設計することで、家族間の公平性・節税効果・承継リスクの分散を同時に実現できます。
受益者を複数設定することで家族間の公平性や利益分配の柔軟性が向上する。
法人を受益者にすると、節税効果や資産管理の安定化が期待できる。
いずれの場合も契約内容の明確化と専門家による運用が不可欠。
複合設計により、配偶者・子ども・法人それぞれのメリットを最大化できる。
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