あいち相続ひろばの野々山です。
相続手続で不動産を共有名義にするかどうか悩んでいませんか。特に複数の相続人が関わる場合、共有名義は一見便利に思えますが、将来の売却や賃貸、担保設定に制限がかかることや、相続人間の合意形成が難しくなるリスクがあります。
本記事では、相続登記で共有名義にする際に知っておきたいリスクや具体的な事例、回避するための分割方法、専門家に相談するタイミングまで丁寧に解説します。読むことで、共有名義のメリット・デメリットを理解し、安全で円滑な相続手続を進める方法がわかります。
この記事は、実家や自宅の土地・建物を相続予定で、相続人間のトラブルや手続きの複雑化を避けたい中高年女性をターゲットにしています。初めて相続登記を行う方でも理解しやすい内容になっています。
前編と中編では、相続登記で共有名義にするリスクと、共有を避ける分割方法を解説しました。ここでは、既に共有名義にしてしまった場合のリスク対策や解消手段、手続きの流れについて具体的にご説明します。
不動産を共有名義にした場合、将来的に以下のようなトラブルが起こりやすくなります。
売却や担保設定に全員の同意が必要
共有者全員の承諾がなければ、不動産の売却や銀行借入時の担保設定ができません。
→ 意見が食い違うと、売却や融資が止まる可能性があります。
賃貸収入や管理費の分配で紛争
共有者間で使用料や賃料、管理費の負担割合を巡るトラブルが発生しやすいです。
権利行使の不一致による裁判リスク
共有者が一部の権利行使を拒否すると、裁判での解決が必要になる場合があります。
相続税や譲渡所得の計算が複雑
共有持分ごとに評価や税務申告を行う必要があり、計算ミスによる追加税負担のリスクがあります。
既に共有名義になってしまった場合、以下の方法で解消できます。
共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に代償金を支払う方法です。
メリット:売却・賃貸・担保設定が自由にできる
注意点:代償金の資金準備が必要で、適正評価が重要
例:母から相続した自宅を長男が取得、妹や次男には評価額に応じて現金で代償。共有状態を解消し、売却や管理の制約を回避。
不動産を売却して現金に換え、各共有者に分配します。
メリット:公平に分配でき、管理コストや揉め事を防げる
注意点:売却手続きや仲介手数料が発生する
例:賃貸マンションを共有で取得した場合、売却して現金化し、持分割合で分配することで、共有による管理トラブルを回避。
話し合いで合意が得られない場合、裁判所に共有物の分割を請求できます。
メリット:法的に共有状態を解消可能
注意点:時間・費用がかかり、感情的なトラブルにつながる可能性
不動産鑑定士による評価を活用
適正な時価評価をもとに代償金や分配額を算定することで、相続人間で公平性を確保。
税理士と連携して税務リスクを確認
代償分割や換価分割による所得税・譲渡所得税、相続税への影響を事前に把握。
司法書士・行政書士に書類作成を依頼
協議書や登記申請書の作成を依頼することで、手続きの漏れや不備を防止。
共有者間で合意を文書化
口頭だけでなく、協議内容を遺産分割協議書にまとめ、全員署名押印。
初めから単独名義を選択する
相続前に生前贈与や遺言で名義を整理することで、将来の揉め事を防ぐ。
複数不動産の場合は専門家による評価と分割計画
代償分割や換価分割の可否を不動産鑑定士・税理士と相談し、最適な分割方法を検討。
共有状態を長期間放置しない
共有登記のまま放置すると、将来的な売却・賃貸・担保設定の制約が積み重なる。
事例1:代償分割で単独名義化
兄弟3人が母から土地を相続し、共有登記のまま放置していた。兄が代償金を支払い単独名義化し、売却・賃貸がスムーズに行えるようになった。
事例2:換価分割で平等に分配
賃貸アパートを共有で相続したが、管理や収益分配で揉めたため売却。現金化して持分割合で分配し、全員納得の形で解決。
事例3:裁判による分割請求
話し合いで合意できなかった土地を裁判で単独取得。法的に共有状態を解消し、後日のトラブル回避に成功。
共有名義にしてしまった場合でも、代償分割・換価分割・裁判による分割などの方法で解消できます。重要なのは、不動産鑑定士・税理士・司法書士などの専門家と連携し、評価や税務・手続きを正確に行うことです。また、共有状態を長期間放置せず、早めに解消することで、売却・賃貸・担保設定の自由度を確保し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。
次は、記事全体のまとめで、共有名義のリスクと解消策を整理し、読者が行動に移せる形にします。
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