「相続は終わったと思っていたのに、まだ手続きが残っていると言われました」
「親名義の家にそのまま住んでいますが、特に問題はないですよね?」
相続のご相談を受けていると、このようなお話を本当によく耳にします。
特に多いのが、不動産の名義変更(相続登記)をしていないケースです。
結論から言うと、
名義変更をしていない不動産は、時間が経つほど“動かせない不動産”になります。
この記事では、
なぜ名義変更をしないまま放置してしまうのか
名義変更をしていないと、実際に何が困るのか
放置した結果、どういうトラブルに発展するのか
を、司法書士の実務経験をもとに、分かりやすくお伝えします。
「相続登記は義務だと知らなかった」
「住んでいるだけだから、名義は気にしていなかった」
こうした理由から、不動産の名義が亡くなった親のまま、
何年も、場合によっては何十年も放置されているケースは珍しくありません。
実際、
実家にそのまま住み続けている
売る予定も、建て替える予定もない
兄弟間でも特にもめていない
こうした状況だと、「今すぐ困らない」ため、
名義変更は後回しにされがちです。
しかし、不動産の名義が故人のままという状態は、
法的には「相続が終わっていない状態」です。
では、不動産の名義変更をしていないと、具体的に何が困るのでしょうか。
最も多いのがこのケースです。
いざ売却しようとしたとき、名義が故人のままだと、原則として売却はできません。
売るためには、
相続人を全員確定し
遺産分割協議を行い
相続登記を済ませる
という手続きを踏む必要があります。
「売りたい」と思ったその時点で、
過去の相続を一からやり直すことになるのです。
名義が自分でない不動産については、
建て替え
解体
金融機関の担保設定
といった行為ができません。
特に最近は、
「古くなった実家を建て替えたい」
「空き家を解体して土地を活用したい」
と考えたときに、初めて名義の問題に直面する方が増えています。
名義変更を放置する最大のリスクは、相続人が増えることです。
たとえば、
父が亡くなったが名義変更をしない
数年後、母も亡くなる
さらにその後、兄弟の一人が亡くなる
こうなると、
当初は数人だった相続人が、
配偶者・子ども・孫へとどんどん増えていきます。
相続人が増えれば増えるほど、
連絡が取れない人が出てくる
考え方や価値観がバラバラになる
遺産分割の話が進まない
といった問題が起こりやすくなります。
よくある誤解が、
「もめていなければ大丈夫」という考えです。
しかし、相続手続きは
相続人全員の合意が前提になります。
たとえ誰も争っていなくても、
1人でも連絡が取れない
1人でも意思表示ができない
1人でも協力してくれない
この状態になると、相続登記は進みません。
「仲が悪いわけじゃないのに、手続きが止まってしまった」
というケースは、実務では決して珍しくありません。
名義変更を先延ばしにすると、
必要な戸籍の数が増える
調査範囲が広がる
手続き期間が長くなる
結果として、
費用も時間も、当初の何倍もかかることがあります。
「元気なうちにやっておけばよかった」
「親が亡くなった直後に動いていれば…」
これは、実際に多くのご相談者が口にされる言葉です。
ここまで読むと、不安に感じられるかもしれません。
ですが、名義変更をしていないからといって、
必ずしも手遅れというわけではありません。
大切なのは、
今の名義は誰のままなのか
相続人は誰になるのか
どこまで手続きが済んでいるのか
を整理することです。
状況によっては、
比較的スムーズに相続登記ができるケース
手順を工夫することで負担を減らせるケース
も多くあります。
不動産の名義変更は、
単なる事務手続きではありません。
それは、
子ども世代に負担を残さないため
家族関係をこじらせないため
不動産を“使える財産”として残すため
の、大切な整理でもあります。
「今すぐ困っていないから」ではなく、
「今だからこそできること」として、
一度立ち止まって考えてみてください。
状況は、ご家庭ごとにまったく異なります。
だからこそ、ネットの情報だけで判断せず、
一度専門家に相談してみることをおすすめします。
「これって、もう遅いですか?」
そんな一言からでも構いません。
相続は、
早く動いた人ほど、選択肢が多く残る手続きです。
相続や不動産・家族信託で
お困りの方お気軽にご相談ください。
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